【分析】労働生産性のミステリー:なぜ「勤勉な日本人」がG7で最下位なのか
1. 努力が報われない国
「日本人は世界で一番勤勉だ」 かつてそう言われていた。しかし、データは残酷な現実を突きつけている。
公益財団法人日本生産性本部の「労働生産性の国際比較(2023年版)」によると、日本の時間当たり労働生産性は52.3ドル(約7,500円)。 これはOECD加盟38カ国中30位。**主要先進7カ国(G7)の中では、なんと1970年以降ずっと「最下位」**である。
米国(89.8ドル)と比較すると約6割の水準だ。 つまり、**「アメリカ人が1時間で生み出す価値を、日本人は1時間40分かけてやっと生み出している」**ことになる。これでは給料が上がるはずがない。
2. ITを「紙の置き換え」に使った悲劇
なぜこうなったのか? 最大の要因は、平成の30年間に行われたIT導入が**「デジタル化(Digitization)」止まりで、「変革(Transformation)」**に至らなかったことにある。
日本企業が行った「IT化」の多くは、このようなものだった:
- Excel方眼紙: 紙の帳票を画面上で再現するために、高度な計算機を使用する。
- ハンコのリレー: 電子申請システムを導入したのに、承認フロー(スタンプラリー)の数は減らさない。
- メールでファイル添付: クラウドで同時編集すれば一瞬で終わる作業を、ファイルをコピーして送り合い、バージョン管理で混乱する。
本来、テクノロジーは「仕事をなくす」ためにある。 しかし日本社会は、テクノロジーを**「既存の非効率なプロセスを、少しだけ早く回す」ために使ってしまった。 結果、「間違ったことを、高速にやる」**という最悪の状況が生まれたのだ。
3. 「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」の増殖
人類学者デヴィッド・グレーバーが提唱した「ブルシット・ジョブ」という概念がある。 誰のためにもなっていない、やる意味を感じられない仕事のことだ。
日本のホワイトカラーの現場は、このブルシット・ジョブで溢れかえっている。 「会議のための資料を作るための会議」「誰も読まない日報」「責任逃れのための稟議書」。
AI国家改造計画において、我々が目指すのは「効率化」ではない。 **「無効化」**である。
4. AIによる「強制終了」
従来の業務改革(カイゼン)では、この構造は変えられなかった。 人間は、一度作った仕事を自分でなくすことが苦手だからだ。
しかし、AI(LLM)は違う。 「資料を読んで要約する」「メールを返信する」「データを整形する」といった、ブルシット・ジョブの9割を、AIは一瞬で無価値化する。
これは危機ではない。30年間上がらなかった生産性を、一気に倍増させる千載一遇のチャンスなのだ。 AIに仕事を奪われることを恐れるな。 「AIに奪われる程度の仕事(ブルシット・ジョブ)」は、喜んで差し出せばいい。
人間は、人間にしかできない「意思決定」と「創造」に回帰する時が来たのだ。
Next Step: では、具体的にどうやって国全体を「高生産性モデル」に書き換えるのか? 第2部「働き方改革」にて、AI時代の新しい労働OSを定義する。