陸章:3進数革命 ―― 「0と1」の限界を突破する論理の最適解

陸章:3進数革命 ―― 「0と1」の限界を突破する論理の最適解


陸章 3進数革命 ―― 「0と1」の限界を突破する論理の最適解

TPU v7の設計図を手に入れた我々だが、そのままコピーしては意味がない。 Googleと同じ土俵(2進数)で戦えば、資金力に勝る彼らに押し潰される。 我々は、ハードウェアを作る前に、コンピュータの言語である「数字の数え方(ロジック)」そのものを変える。 「2進数(Binary)」から「3進数(Ternary)」への移行だ。

■ 配線のジャングル:2進数の非効率

現在のコンピュータは全て「0(OFF)」と「1(ON)」で動いている。 しかし、これは「スイッチの作りやすさ」を優先した20世紀(真空管時代)の妥協に過ぎない。 「0」と「1」だけで複雑な情報を表現しようとすると、桁数が膨大になり、回路図は**「配線のジャングル」**と化す。これが計算の遅延とエネルギー浪費の根本原因だ。

■ 神の数式:もっとも効率が良いのは「e」

数学的に証明されている事実がある。 「ある数値を表現するために、最も少ない回路網で済む基数(何進数か)」を計算すると、その答えは**ネイピア数「e(2.718…)」**になる。

  • 2進数: eより小さい。効率が悪い。
  • 3進数: eに最も近い整数。「3」こそが、宇宙で最も効率の良い情報圧縮方式なのだ。

■ 平衡3進数(Balanced Ternary)

そこで日本は、信号を「0, 1」ではなく、以下の3つの状態で制御する**「平衡3進数」**の論理体系を採用する。

  1. +1 (正 / Positive)
  2. 0 (無 / Zero)
  3. -1 (負 / Negative)

情報密度の爆増と配線の削減

たった1つの状態が増えるだけで、表現できる情報量は対数的に跳ね上がる。

  • 2進数: 「1024」を表すには10本の信号線が必要(2102^{10})。
  • 3進数: たった7本の信号線で済む(37=21873^7 = 2187)。

同じ計算をするのに必要な回路規模(配線の数)が**約60%**に圧縮される。これは、どんな素材でチップを作ろうとも変わらない「数学的な勝利」だ。

■ 脳に近いAI

さらに、この構造は生物学的にも理にかなっている。 人間のニューロン(脳神経)の発火も、単純なON/OFFではなく、**「興奮(+1)」「抑制(-1)」「静止(0)」**に近い複雑な挙動をしている。

つまり、3進数チップは、2進数チップよりも圧倒的に「生物の脳」に近い構造なのだ。 確率計算を行う九官鳥(AI)にとって、これが理想的な「身体」であることは疑いようがない。

■ なぜ「シリコン」ではなく「論理」なのか?

これまで3進数が普及しなかったのは、従来の電気回路(シリコン)では、「-1(負の電圧)」や「0(完全な絶縁)」を高速に切り替える制御が難しかったからだ。 無理にシリコンでやろうとすれば、逆に回路が複雑になってしまうジレンマがあった。

しかし、我々には勝算がある。 この「+、0、-」という3つの論理状態。 実はこれこそが、次章で語る**「ある物理現象(Wave)」**の性質と完全に一致するのだ。

我々はGoogleから奪ったGeminiの設計図(回路図)を、日本のエンジニアの手で「3進数論理」に書き換える(リコンパイルする)。 この「論理の革命」こそが、次なる「物理の革命」への唯一の入り口となる。

→ 漆章:光電融合へ続く