拾章:行政革命 ―― 「申請」という概念の消滅

拾章:行政革命 ―― 「申請」という概念の消滅


拾章 行政革命 ―― 「申請」という概念の消滅

最強の「脳(TPU)」と、無限の「血液(円)」を手に入れた日本。 だが、どれだけ計算速度が上がっても、社会のルールを決める**「法律」と、それを運用する「行政」**が、昭和の紙ベースのままでは意味がない。

フェラーリのエンジンを積んで、砂利道を走るようなものだ。 拾章では、この国のOS(オペレーティングシステム)である行政機構を、AI前提で完全に再構築する。

■ 「申請」の死(The End of Application)

これまでの行政は「プル型(申請主義)」だった。 「困ったら役所に来て紙を書け。書き方が正しければ助けてやる」という、上から目線のスタンスだ。 知識がない弱者は救われず、手続きの手間だけで国民の時間は奪われてきた。

我々は、「申請」という概念そのものを廃止する

プッシュ型行政(Push Governance)

全家庭にある「Home-8」と、階層3(市町村ノード)が連携することで、行政は以下のように変わる。

  1. 察知: あなたが失業した、子供が生まれた、介護が必要になった。これらのライフイベントを、AIは(プライバシーを保護しつつ)リアルタイムで検知する。
  2. 即時実行: 「申請書」は書かなくていい。 条件を満たした瞬間、AIが勝手に手続きを完了させ、「失業給付金」や「出産祝い金」を口座(デジタル円)に振り込む。
  3. 事後通知: 「手続きしておきましたよ」と、Home-8が事後報告するだけ。

役所に行く必要はない。「あなたの家(Home-8)」が、市役所の出張所になるのだ。

■ 公務員の仕事が変わる

階層3(神経節)である市役所や出先機関から、「窓口業務」は消滅する。 住民票の発行、税金の計算、許認可。これらはAIが0.1秒で処理する。

では、公務員はクビか? 違う。 彼らは「書類の奴隷」から解放され、本来の**「人間相手の仕事」**にシフトする。

  • 独居老人の見守り訪問。
  • AIには解決できない近隣トラブルの仲裁。
  • 地域のコミュニティデザイン。 「判子を押す仕事」は機械に任せ、人間は「心に寄り添う仕事」に専念する。

■ Law as Code(法 = コード)

日本の法律は、曖昧な日本語で書かれているため、解釈が分かれ、裁判に時間がかかる。 我々は、法律の定義そのものを変える。

「法律とは、実行可能なプログラムコードである。」

デジタル法治国家

例えば「脱税」は、AI監視社会では「物理的に不可能」になる。 商取引が行われた瞬間、AI(階層1)に含まれる税法アルゴリズムが自動で税額を計算し、その場で徴収(天引き)する。 「確定申告」という苦行も、この世から消滅する。

ルールがコード化されることで、「意図せぬ法律違反」がなくなり、コンプライアンスコストがゼロになる

■ リアルタイム民主主義

選挙も変わる。 「4年に1回、名前を書いて箱に入れる」という儀式は、あまりにも帯域(バンド幅)が狭すぎる。

ベクトル投票(Vector Voting)

国民は、個別の法案(道路を作るか? ダムを作るか?)をいちいち勉強しなくていい。 代わりに、**「自分の価値観(ベクトル)」**をHome-8のAIに入力しておく。

  • 「経済成長より環境保護」
  • 「高齢者より子育て支援」

国会で法案が出ると、あなたの分身であるAIエージェントが、あなたの価値観に基づいて**「数秒で模擬投票」**を行う。 これにより、サイレントマジョリティ(声なき多数派)の意思が、リアルタイムで国政に反映される。 「政治に関心がない」のではなく、「投票が面倒だった」層の声が届くようになるのだ。

■ 結論:最適化された国家

  • 待ち時間: ゼロ
  • 申請の手間: ゼロ
  • 脱税・不正: ゼロ

行政の摩擦(フリクション)が消えることで、日本社会の回転速度は極限まで上がる。 「お役所仕事」という言葉は、過去の笑い話になる。

ハード(光)、ソフト(行政)、マネー(円)。 全てのピースは揃った。 あとは、このシステムが導き出す**「人類の最終到達点」**を見届けるだけだ。

→終章:シンギュラリティの先へ続く