【技術】シリコン列島の復活:Rapidusと2nmプロセスの賭け
1. 「産業のコメ」から「戦略物資」へ
かつて1980年代、日本は世界シェア50%を誇る半導体王国だった。 しかし、「安く作ること」に固執し、設計(Design)と製造(Foundry)の水平分業に乗り遅れた結果、見る影もなく凋落した。
だが今、潮目は変わった。 AI、自動運転、5G。これら全てを動かす**「最先端ロジック半導体」は、もはや単なる工業製品ではない。 石油や食料と同じ、いやそれ以上に重要な「戦略物資」**となったのだ。
2. 北海道(Rapidus)と九州(TSMC)の役割
日本は今、国策として2つの拠点を整備している。
❄️ 北の要塞:Rapidus(北海道・千歳)
目指すのは**「2nm(ナノメートル)」世代の量産だ。 これは現在のスマホに入っているチップ(3-4nm)よりもさらに微細で、計算能力と省電力性能が段違いに高い。 成功すれば、日本は一気に「AIチップの製造拠点」**として世界最前線に復帰する。 IBMやベルギーのIMECと連携し、日米欧の連合軍で「打倒・台湾/韓国」を掲げる国家プロジェクトだ。
🌋 南の拠点:TSMC/JASM(熊本)
世界最強のファウンドリ、TSMCを誘致した熊本工場。 ここでは**「12-28nm」**という、自動車や産業機器に不可欠なミドルレンジのチップを量産する。 日本の自動車産業(トヨタ、ソニー)を守るための、絶対に止められない心臓部である。
3. なぜ日本なのか?
世界中の半導体メーカーが、なぜ今日本に注目しているのか? それは**「製造装置」と「素材」**において、日本が未だに最強だからだ。
- シリコンウェハー: 信越化学工業、SUMCO(世界シェア約60%)
- フォトレジスト: JSR、東京応化工業(世界シェア約90%)
- 製造装置: 東京エレクトロン、スクリーン、ディスコ
チップそのものは作れなくなっても、**「チップを作るための道具と材料」**は日本が握っている。 このチョークポイント(急所)をカードに使い、製造拠点を国内に呼び戻すのが今の戦略だ。
4. ラストチャンス
この「シリコン列島構想」が失敗すれば、日本は永遠に「デジタル小作人」のまま終わる。 成功すれば、AIという次世代の富の源泉を、ハードウェア(半導体)からソフトウェア(国産LLM)、エネルギー(データセンター)まで、フルスタックで自給できる数少ない国家になれる。
これは単なる産業政策ではない。 21世紀後半を生き抜くための、日本の**「生存本能」**の発露なのだ。
Next Step: 技術の裏付けは終わった。 ビジョン、働き方、生活、技術。すべてのピースは揃った。
最後に残るのは、これらを統べる「新しいルール(法律と統治)」だ。 最終章、**第5部「統治と制度(Governance)」**へ進む。