腕時計の姿勢差
電池で動作するクォーツ腕時計では毎日何秒も時間が変動することはありませんが、ゼンマイで駆動する機械式時計は、日本製であっても毎日数秒から数十秒遅れたり進んだりします。また、時計を置く向き(姿勢)によっても時間のズレ方が変わります。
手持ちの機械式時計3機種(SEIKO プレザージュ SARW021 ・ SEIKO5 SNKE85J1 ・ TIME100)のスペックとシースルーバックを比較しつつ、SARW021 を5つの姿勢(竜頭上・竜頭下・立てる・寝かせる・腕につけたまま)で8時間計測した結果、私の個体では 「腕につけたまま(8時間で1〜2秒遅れ)」 が最も精度が良いことが分かりました。
- 機械式腕時計の日差(時間の遅れ・進み)や置く向きによる「姿勢差」が気になる方
- SEIKOプレザージュ(SARW021)やSEIKO5など機械式時計の精度・裏蓋(シースルーバック)の違いを知りたい方
- 夜寝る時に機械式時計をどの向きで置けば時間のズレが少なくなるか試してみたい方
所有している機械式時計3機種とシースルーバック
電池で動作する腕時計では、毎日何秒も時間が変動するなんてことはないので悩むことはありませんが、ゼンマイで駆動する機械式時計は、日本製でさえ毎日数秒から数十秒遅れたり進んだりします。生きているようでそれが良かったりするのですが……。
機械式時計は、SEIKOのプレザージュ SARW021、SEIKO5 SNKE85J1、TIME100 W60011M.03AN と、少ないですが持っています。
SEIKO プレザージュ SARW021


SEIKO5 SNKE85J1


TIME100 W60011M.03AN


機械式時計は、裏面がガラスで内部の機械が見える(シースルーバック といいます)ものが多く、特徴になっています。
電池式時計は日本だと電池が簡単に入手できますが、海外では難しい所もあるため、そういった地域では機械式時計が好まれます。
また、裏面の機械を見せることで、偽物の判別もできます。
SARW021 と SNKE85J1 は裏面が異なっているのがわかると思います。SNKE85J1はロボットが作っています。SARW021は作りが凝っています。
今も持っている TIME100 は、毎日数分の遅れがあるので、時間を見るためというよりデザインを楽しむための物と割り切っています。
ずっとワインダー(時計を回転させてゼンマイを巻くための装置)に入れていますが……針が止まっています。
ワインダーだと巻いてくれないので、ワインダーの電源を切っています(※自動巻きムーブメントにはセイコーのマジックレバー方式のような「両方向巻き上げ」と、一方向の回転でしか巻かれない「片方向巻き上げ」があり、ワインダーの回転方向設定が合っていない場合や回転数不足・油切れ等では巻かれずに止まることがあります)。
TIME100のベルトは付け替えています。
純正ベルトは汗、洗剤、エタノールなどで脱色して白になり、ただの革になったのでイタリア製のベルトに付け替えました。
3機種のスペック・精度比較
3機種を精度で見ると以下のようになります。
| 項目 | セイコー プレザージュ | セイコー5 | TIME100 | 参考:グランドセイコー |
|---|---|---|---|---|
| 型式 | SARW021 | SNKE85J1 | W60011M.03AN | SBGJ や SBGH |
| キャリバーNo. | 6R21 | 7S26 | 不明(どこのを使っているか?) | 9S86 や 9S85 |
| 日差(静的精度) | +25秒〜-15秒 | +45秒〜-35秒 | 数分 | +5秒〜-3秒(※携帯精度+8秒〜-1秒) |
| 生産国 | 日本製 | 日本製 | 中華製 | 日本製 |
| 価格目安(2020年執筆当時:TIME100基準で何個分か) | 24個分 | 2個分 | 基準(1個分) | 168〜240個分 |
キャリバーNo.があるセイコーは、部品の製造から組み立てまで自社(セイコーグループのマニュファクチュール体制)で行っています。他のファッション時計メーカー等は時計の駆動する部分(ムーブメント)を外部から入手して組み立てるというケースが多かったりします。
置き方による姿勢差の実測(SARW021で8時間計測)
機械式時計は、横に置いた時、縦に置いた時、装着した時で精度が異なります。
本来の精度の測り方は、同じ時間・同じ姿勢で1週間置いて、1週間後に遅れ進みを見て7で割って一日あたりの日差にするそうですが、1週間も待てないので、毎日寝る前に時計を設置し、朝起きたとき(8時間経過後)の遅れ進みを計ってみました。
正確な遅れ進みではなく単なる目安です。計測した時計は SARW021 です。
竜頭上

竜頭下

立てる

寝かせる

| 姿勢 | 竜頭上(9時下) | 竜頭下(3時下) | 立てる(6時下) | 寝かせる(文字盤上) | 腕につけたまま |
|---|---|---|---|---|---|
| 8時間経過後の遅れ | 3秒 | 2〜3秒 | 3〜4秒 | 2〜3秒 | 1〜2秒 |
これは8時間放置の遅れであり、24時間放置を実験していないので正確ではありませんが、この8時間放置を単純に3倍にすると、一番遅れが少ないのが 「腕につけたままで1日あたり3〜6秒の遅れ」、最も遅れるのが「立てた状態(6時下)で9〜12秒の遅れ(竜頭上でも約9秒の遅れ)」となります。
なお、購入直後は竜頭を下にした状態で8時間で30秒遅れていました(機械部品と潤滑油が馴染むにつれて落ち着いたようです)。
通常、立て置きでテンプが上に来る置き方が精度がよいとも言われますが、私の時計(SARW021)では 腕につけたまま が一番良さそうです(腕の動きで自動巻きゼンマイのトルクが高く保たれ、かつ複数の姿勢が平均化されるためと考えられます)。
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テンプ・ひげぜんまいの重心偏りと「ホゾ摩擦」による6姿勢の差 :時計検査では水平2姿勢(文字盤上・文字盤下)と垂直4姿勢(12時下・3時下[竜頭下]・6時下・9時下[竜頭上])の計6姿勢が基準になります。平置き(文字盤上/下)ではテンプの軸(天真)の先端(ホゾ)の「点」で重力を受け止めるため摩擦抵抗が小さく振り角が大きくなりやすい一方、縦置き(3時・6時・9時・12時下)では天真の側面に重力がかかって摩擦が増えるほか、テンプやひげぜんまいの微小な重心偏り(片重り)に対する重力の向きが変わることで、進み・遅れの差(姿勢差)が生じます。
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置き向きによる歩度微調整の限界(大きな狂いは脱磁・オーバーホールへ) :自分の個体で「進みやすい向き」と「遅れやすい向き」を把握しておけば、日中の着用で数秒遅れた日は夜間に進みやすい向きで置き、進んだ日は遅れやすい向きで置いて日差を微調整する 楽しみ方ができます。ただし、それで相殺できるのはあくまでカタログ精度内の数秒〜十数秒程度です。購入直後の馴染み期間を過ぎても 1日に数分以上の大幅な進み・遅れ(または急な停止) が出る場合は、置き向きでは解決できない 「磁気帯び(ひげぜんまい同士が磁力で吸着して大幅に『進む』ことが多い)」や「潤滑油の劣化・油切れ・部品摩耗」 のサインですので、時計店での 脱磁(磁気抜き)や3〜5年目安のオーバーホール(分解掃除) を依頼してください。
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枕元での「スマホ・バッグ磁石からの磁気帯び」厳禁 :夜寝る前に時計を置く際、枕元の スマートフォン(特に背面磁石が強力なiPhoneのMagSafeやスピーカー部)、タブレットのマグネットカバー、ワイヤレス充電器、ノートPC、バッグの留め具マグネット のすぐ隣(5cm以内)に置くと簡単に磁気帯びを起こします。電子機器や磁石からは必ず 最低10cm〜15cm以上離した定位置(木製や革製のトレイ等) に保管しましょう。
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カレンダー早送り禁止時間帯(20時〜翌4時)と就寝着用のケア :ムーブメントにより21時〜翌1時や翌4時など幅がありますが、時計の針が 午後8時(20時)〜午前4時 を指している間は内部で日付送り歯車が噛み合うため、故障防止の安全マージンとしてこの時間帯のカレンダー手動早送りは厳禁です(先に針を午前6時付近へ進めてから日付を合わせます)。また、腕につけたまま寝る場合は壁やベッド枠への衝突に注意し、起床後に乾いた柔らかい布で裏蓋やベルトの汗・皮脂を拭き取るとパッキンや革ベルトが長持ちします。
この記事で紹介した機械式時計