肆章:データの主権 ―― 全知全能の学習と、厳格なる「階層化」
肆章 データの主権 ―― 全知全能の学習と、厳格なる「階層化」
参章で、AIは確率計算を行う九官鳥だと定義した。 ならば、その九官鳥に何を学ばせるか。 「インターネットは汚いから見せない」という綺麗事では、国は守れない。犯罪者の手口を知らなければ、犯罪は防げないからだ。 日本版AIは、「森羅万象すべてを学習する」。その上で、誰に何を見せるかを厳格に管理する**「情報の階層化(Tiering)」**を行う。
■ 「Tay」の教訓と、全知への渇望
2016年、マイクロソフトのAI「Tay」は、ネットの悪意を無防備に学習し、24時間で差別主義者へと堕ちた。 しかし、だからといって「汚い情報」を遮断すれば、AIは「世間知らず」になり、テロや暴動の予兆を検知できなくなる。 敵(犯罪・テロ・他国の工作)を倒すためには、敵の思考も学習しなければならない。
■ 国立国会図書館(NDL)の真実
我々のコアデータとなるNDLだが、ここには誤解がある。「NDL=高尚な学術書しかない」わけではない。 納本制度により、NDLには成人向け漫画、アダルト雑誌、過激派の機関紙、新興宗教の教義書に至るまで、日本で生まれた全ての出版物が収蔵されている。 つまり、NDLデータであっても「無修正で子供に見せてよい」わけではないのだ。
しかし、ネットのゴミデータと決定的に違う点がある。それは**「正確なメタデータ(書誌情報)」**が付与されている点だ。
- 構造化された知: 出版社、著者、ジャンルコード(Cコード)、発行年が明確であるため、「これは成人向け」「これは政治団体の主張」といった属性判別が容易だ。
■ ベクトルDBとRAG:嘘をつかない仕組み
ここで重要なのは、これらの膨大なデータをAIの脳内(パラメータ)に丸暗記させるだけではない、ということだ。 丸暗記させると、AIは記憶があやふやになり、平気で嘘(ハルシネーション)をつく。
我々は、NDLと全ネットデータを**「国家ベクトルデータベース(National Vector DB)」**として構造化して格納する。
- 外部記憶装置(カンニングペーパー): AIは質問を受けると、まず自分の脳みそで考える前に、この巨大なデータベースを瞬時に検索する。
- RAG(検索拡張生成): データベースから「確実な正解(NDLの文献など)」を見つけ出し、それを引用しながら回答を作成する。
- 追跡可能性: 「ソースは2ちゃんねる」「ソースは明治時代の公文書」といった出所が明確になるため、情報の信頼性を100%担保できる。
■ 属性タグとアクセス権限(Security Clearance)
このベクトルDBに格納される際、全てのデータには厳格な**「属性タグ(Attribute Tag)」**が付与される。 AIは出力時にユーザーの権限(クリアランス)を確認し、DBからの検索結果をフィルタリングする。
【レベル0:一般公開(Public)】
- 対象: 全国民、子供、教育機関。
- 閲覧可能: NDLの一般図書、ニュース、無害化されたネット情報。
- フィルタ: AIの検閲機能により、ポルノ、暴力、特定思想の勧誘、犯罪手口は自動的に遮断される。
- 目的: 安心安全な教育と、文化的な生活。
【レベル1:成人指定(R18)】
- 対象: 18歳以上の認証済み国民。
- 閲覧可能: NDLに収蔵されている成人向けコンテンツ、酒・タバコ・ギャンブルなどの嗜好情報。
- 目的: 大人の娯楽と経済活動。納本された文化遺産としての「エロ」も、大人は享受する権利がある。
【レベル2:司法・捜査(Law Enforcement)】
- 対象: 警察、検察、裁判官、弁護士。
- 閲覧可能: 「犯罪系タグ」(詐欺の手口、薬物の取引ルート、過去の判例、未解決事件の調書)。
- 目的: 犯罪の予知、捜査、公正な裁判。AIは「泥棒の思考」をシミュレートし、泥棒を捕まえる。
【レベル3:国家保安(National Security)】
- 対象: 公安警察、内閣情報調査室、認定された学者・研究者。
- 閲覧可能: 「反体制・過激派タグ」(テロリズム、共産主義革命の扇動マニュアル、カルト宗教の洗脳手法、爆発物製造法)。
- 目的: テロの未然防止と、国家転覆の阻止。
- NDLの活用: 過去の過激派の機関紙やビラも学習済みであるため、「現在のSNS上の書き込み」と「過去のテロ組織の思想」を照合し、潜在的なテロリストを早期発見する。
■ 「和」の確率論と、知の防波堤
このように、日本版AIは「清濁併せ呑む」巨大な知性となる。 NDLのデータもネットのデータも、全てをベクトル化してDBに格納し、属性分けして管理する。
善悪の両方を知り尽くした上で、国民には「善」を提供し、国家の敵には「悪」の知識を持って対抗する。 これこそが、単なる便利ツールを超えた、国家を守護する**「知のイージスシステム」**である。