伍章:NVIDIAの包囲網 ―― 利益率80%の通行税と、熱の壁
伍章 NVIDIAの包囲網 ―― 利益率80%の通行税と、熱の壁
ソフトとデータの話は終わった。ここからは、それを動かす「物理的な身体(ハードウェア)」の話だ。 現在、世界のAI開発はたった一社、NVIDIAに首根っこを掴まれている。この構造に従属している限り、日本の勝機はゼロだ。
■ 利益率80%の「知能通行税」
NVIDIAの最新GPU(H100やBlackwell)は、1基あたり数百万〜数千万円で取引されている。 しかし、その原価はいくらか? TSMCでの製造コストなどを引いても、販売価格の約8割はNVIDIAの粗利益だと言われている。
- デジタル小作人: 日本が1兆円分のGPUを買っても、8,000億円はNVIDIAへの「上納金」として消える。残りの2,000億円分のシリコンしか手元に残らない。これでは、国富が流出するだけで、永遠に「知能の地主」にはなれない。
■ 「GPU」はAI専用ではない
そもそもGPU(Graphics Processing Unit)は、その名の通り「画像処理」のために生まれたチップだ。 AIブームに乗じて改良されてはいるが、基本設計は「絵を描くための計算機」であり、九官鳥(言語モデル)を動かすために最適化された専用設計ではない。
- 無駄な回路: AIには不要な画像出力用の回路や、汎用的な機能が残っており、それが電力の無駄遣い(オーバーヘッド)を生んでいる。
■ 「熱」という物理的限界
最大の問題は「熱」だ。 現在のGPUは、微細化の限界に達しつつある。回路を詰め込めば詰め込むほど、電子がぶつかり合い、猛烈な熱を発する。
- 冷却のパラドックス: 計算するために電気を使い、その熱を冷やすためにさらに電気(エアコン・水冷)を使う。データセンターの消費電力の40%は「冷却」に使われている。
- 2.5 ZettaFLOPSの不可能: NVIDIAのGPUを並べて、本構想の目標である2.5 ZettaFLOPSを実現しようとすれば、原発が数十基必要になる。日本列島が熱暴走してしまう。
■ 結論:ルールを変える
彼らの土俵(GPU)で戦ってはいけない。 「電気を食うシリコン」と「2進数」という、20世紀のルールそのものをひっくり返す必要がある。 次章、日本が隠し持つ「二つの切り札」を公開する。